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IT業界の多重下請構造は問題なの? ② 

 

前回、IT業界の多重下請構造は問題なの?① では、

多重下請け構造の問題点を洗い出してみました。つぎは、

 

「何故こんな構造になっているのか?」

「理想の構造とは?」

「では、何をどのようにすれば良いの?」

 

を順をおって考えてみたいと思います。

 


■何故こんな構造になっているのか?

多重下請構造は、大きな会社から、従業員数名の小さな会社まで、数多の会社が商流上で関連している状態です。ここには「①大手に一括して発注される」「②請負元エンジニアだけでは足りない」といった特徴があるように思います。

①については、ユーザー企業のシステム部門にプロジェクトを統括するマネジメント力・技術力がないことが要因だと思います。あるデータでは、アメリカと日本ではエンジニアの所属先の比率が正反対だということを示しています。


       ユーザー企業   ベンダー
アメリカ     7割      3割

日  本     3割      7割

 
つまり、ユーザー企業は十分な技術者を抱えられていないことから、望むシステムをワンストップで、そして責任をもって一括請負い可能なベンダーを必要としているといえるかと思います。
 
次に②についてですが、一括受注した案件のなかには自社リソースでは提供不可能なもの(例えば顧客がIBMのハードを希望しているが当該ハードウェアのノウハウを持っていないなど)と、もう一方で、提供可能だが要員不足で対応できないものとがあります。
後者については、注文を受けて初めて生産を始める受注産業であるシステムインテグレーションは、大勢のエンジニアを抱えていると経営上のリスクになります。案件が無い時に人件費が負担になるということですね。
また逆に案件を多く受注したときに不足するエンジニアを調達するためにも、エンジニアを外部調達する仕組みが必要だと言えると思います。

健全な経営をしようと思ったら非稼働率が10%(10人のエンジニアが在籍する会社であれば1名が空いている状態)くらいが適当かと思います。それを前提に考えると数十人単位で人を集めるには沢山の会社が関係することになるのは当然といえますね。

「人件費は日本では固定費、アメリカでは変動費」と比喩されるように、日本の労働法下では基本的に雇用した人を案件が終了したからといって解雇出来ません。

つまり、この多重下請け構造は、日本の現労働法下で必然的に作り上げられた人材供給システムであるといえるかと思います。

この仕組みのおかげで、必要な時に必要な数の人員が調達可能となり、エンジニアも仕事にありつけるという効用を業界にもたらしているといっても過言ではないのではないでしょうか?

また、エンジニアが独立するのに、低資本で開業可能な為、簡単にスピンアウト出来ることも会社を多くしている要因の一つだと思います。

特定派遣の廃止が濃厚のようです。この下請構造に蔓延る一部のよろしくない会社の排除が趣旨とみましたが、根本である雇用制度を無視して廃止を行っても偽装請負に形をかえるだけのような気がします。また、偽装請負撲滅も同時に敢行した場合は、日本企業のIT化への悪影響、また一部のITエンジニアに仕事が回らずIT業界を去るといったマイナスも考えられると思います。

この件については、またどこかで考えを整理し意見を述べたいと思いますが、産業の特性に応じた雇用制度の多様性も検討したほうが良いように思えます。

 

 次は「理想の構造は?」について考えてみました。

 

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